傷病手当金
2014年10月18日 15:56疾病または負傷に対し療養の給付等を行ったとしても、疾病または負傷による療養のため労務不能となり、収入の喪失または減少をきたした場合、生活の安定を欠くことになり、労働力の早期回復に支障をきたすことになる。
このため収入の喪失または減少をある程度補てんし生活保障を行う必要がある。
この生活保障制度が傷病手当金制度であって、被保険者の請求に基づいて支給される。
■支給要件
被保険者(任意継続被保険者を除く)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金が支給される。
※労務に服することができなくなった日から起算して3日を「待期期間」という。この待期期間は連続された3日をいい、通算されない。
(1)療養のため労務不能であること(支給対象となる療養の範囲)
①療養は、保険給付として受ける療養に限らず、自費で疾病または負傷の療養をした場合でも、労務不能につき相当の証明があるときは支給される。また、病後の静養や自宅療養のため労務不能と認められる期間についても、支給対象となる。
ただし、療養の給付の対象とならない疾病等(美容整形手術等)について被保険者が自費で治療等をし、そのため労務不能となった場合には支給しない。
②被保険者資格取得前にかかった疾病または負傷については、資格取得後に療養を要することとなった場合、傷病手当金は支給される。
(2)労務に服することができないこと
①労務不能と認められる基準
労務不能の判定は必ずしも医学的基準によって行わなければならないものではなく、その被保険者の従事する業務の種類等を考えて、その本来の業務に堪え得るか否かを標準として、社会通念に基づき保険者(協会健保または健保組合など)が認定する。
尚、資格取得後の傷病手当金の継続給付を受ける場合は、事業場で従事していた当時の労務に服することができるか否かで認定する。
《労務不能と認められる場合》
・休業中に家事の副業に従事しても、その傷病の状態が勤務する事業所における労務不能の程度である場合
・被保険者が療養の給付を受ける場合に、保険医がその傷病は休業を要する程度のものでないと認定しても、被保険者の住所が診療所より遠く、通院のため事実上労務に服せない場合
・現在労務に服していても差し支えない者であっても、療養上、その症状が休業を要する場合
・本来の職場における労務に就くことが不可能な場合であって、本来の職場における労務に対する代替的性格を持たない副業ないし内職等の労務に従事したり、あるいは傷病手当金の支給があるまでの間、一時的に軽微な他の労務に服することにより、賃金を得るような場合、その他これに順する場合
《労務不能と認められない場合》
・医師の指示または許可のもとに半日出勤し、従前の業務に服する場合
・就業時間を短縮せず配置転換により同一事業所内で従前ひ比べやや軽い労働に服する場合
②労務不能期間に含まれる日
・公休日(月給者、日給者を問わない)※労務不能期間であって、待期期間ではない
・被保険者が死亡した場合、死亡した当日は労務不能期間に含む(資格喪失日が死亡の翌日のため)
・事業主の保険料未納があっても被保険者は傷病手当金を受けられる
(3)継続した3日の待期期間を満たしていること
①待期・・・労務不能となった日から起算して3日間は待期期間と称し、この期間は傷病手当金を支給せず、3日を経過した日(4日目)から支給を開始する。※虚病防止のため
②待期の起算日・・・労務に服することができない状態になった日から起算するが、その状態になったときが業務終了後である場合は、その翌日から起算する。
③待期の完成・・・労務不能期間が3日連続して完成する(労災は通算3日)。ただし、この3日間は事実上の労務不能期間であるから、年次有給休暇を使用して実際に労務に服していない日数も含まれる。
■支給額
1日につき、標準報酬日額の2/3に相当する金額を支給する。※5捨6入
■傷病手当金と報酬との調整
報酬の全部または一部を受け取ることができる場合、その報酬を受けることができる期間は傷病手当金を支給しない。
ただし、報酬の額が傷病手当金の額(1日につき標準報酬日額の2/3)を下回るときは、その差額を支給する。
■傷病手当金と障害厚生年金または障害手当金との調整
原則として厚生年金法の障害厚生年金または障害手当金が優先され、傷病手当金は支給されない。
(1)障害厚生年金との調整
障害厚生年金の額を360で除して得た額が傷病手当金の額を下回るときは、その差額を支給する。
(同一の支給事由について障害基礎年金も受給できる場合は、障害厚生年金と障害基礎年金の合算額を360で割る)
(2)障害手当金との調整
障害手当金の受給日以後、受けるであろう傷病手当金の額の合計額が、当該障害手当金の金額に達する日まで傷病手当金は支給されない。ただし、その合計額が障害手当金の額に達した日において、その合計額が障害手当金の額を超えるときはその差額を支給する。
■傷病手当金と老齢退職年金給付との調整
被保険者資格を喪失したもので、傷病手当金の継続給付を受けるべきものが老齢または退職を支給事由とする年金給付を受けることができる場合は、諸病手当金は支給しない。
ただし、当該年金給付の額を360で除して得た額が傷病手当金の額を下回るときは、その差額を支給する。
■傷病手当金と労災休業(保障)給付との調整
労災の休業(補償)給付を受けている被保険者が業務災害以外の傷病によっても労務不能となった場合、当該休業(補償)給付の額が傷病手当金を下回るときは、その差額を支給する。
■傷病手当金と出産手当金との調整
出産手当金が優先され、傷病手当金は支給されない。また先に傷病手当金が支給された場合には、当該金額は出産手当金の内払いとみなされる。
■介護休業期間中の傷病手当金
介護休業期間中でも傷病手当金が支給される。尚、同一期間内に事業主から介護休業手当等、報酬と認められるものが支給されるときは、傷病手当金の支給額を調整する。
■傷病手当金の支給期間
(1)傷病手当金の支給期間は、同一の疾病または負傷およびこれらにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から1年6ヶ月が限度である。
※1年6ヶ月分支給されるのではなく、1年6ヶ月を経過した場合は打ち切られる。
(2)支給期間の起算日
①通常の場合の支給期間の起算日
支給期間は現実に支給を開始した日を起算日とする。なので、待期の完成した4日目が必然的に起算日とはならない。
②報酬が受けられる者の起算日
報酬の支給が停止された日、または減額支給されることにより傷病手当金が支給されることとなった日から起算される。